[コメント] 赤い砦(1955/米)
このシーンで、ダグラスとスー族のグレイウルフ−ハリー・ランダースとのやりとりも見せるので、マルティネリをめぐって、この2人が争うことになるのだろうと予想させるオープニングだ。
本作のダグラスはインディアンに通じているスカウト。グレイウルフの兄で酋長のレッドクラウド−エドワード・フランツとは友人だと云う(自認しているだけ、という感じもあるが)。彼がオレゴン州のある砦から幌馬車隊を先導し、インディアン(スー族)の土地を横断しようとする話だ。こゝにスー族が見つけた金鉱を狙う男たち−ウォルター・マッソーらが絡み、また、幌馬車隊の移民たちや、ダグラスとインディアン娘、クレジットに「新人」と表示されるマルティネリとの恋愛譚、結構濃厚なラブシーンが描かれる映画だ。
脇役について触れておくと、まずは、マッソーが、映画デビューの年(バート・ランカスターの『ケンタッキー人』がデビュー作)とは思えないぐらい、立派にダグラスと対抗する存在感のある悪役を演じている。悪役歴としてはマッソーよりもずっと長いロン・チャニーJr.よりも目立っている。また、カーク・ダグラスが、先妻のダイアナ・ダグラス(マイケル・ダグラスの母親)と共演しているというのも興味深いところで、彼女は小さな子供(男の子)のいる移民の寡婦を演じているのだが、カーク・ダグラスに気がある役なのだ(一緒に農場をやって欲しいとやんわり誘う)。他の移民には、ダイアナ・ダグラスにご執心の陽気な男がアラン・ヘイル(ジュニア)。ちょっと嫌味な俗物といった男をレイ・ティール。そして、エライシャ・クックJr.が、変わりゆく西部を写し取りたいという夢をもつ写真技師を演じている。クックにダグラスが、俺にとって西部は美女みたいなものだ、ずっと変わって欲しくない、と云う雄大な渓谷を背景にしたシーンが、本作の一番良いシーンかも知れない。あと、砦の騎兵隊員では、隊長の大佐をウォルター・アベル、その副官にウィリアム・フィップス。部下の兵卒でハンク・ウォーデンが出て来るが(マッソーを監房に入れる場面)、ウォーデンはスー族の酒好きの男−クレイジーベアとしても登場し、ちょっとしたコメディパートを演じているのだ。
あるいは、幌馬車隊の野営シーンをロングからフルショットの緩やかなパンニングで見せるフォトジェニックな画面や、砦での大掛かりな銃撃戦のスペクタクル(スー族が馬に木の枝を曳かせて凄い土煙をたてる効果)など、アンドレ・ド・トスらしい画面造型にも見るべきところの多い西部劇だ。ただし、例えば、数日かけて移動したように感じられる幌馬車隊が、一瞬にして、元いた砦に引き返しているといった部分で、距離と空間の描写がとてもいい加減な繋ぎになっているのは、いただけない。
#備忘
・ダグラスの乗る馬の首に、矢が刺さったように見せるショットがある。
・ダグラスが馬の後方、後肢側からジャンプしてまたがるショットは『戦う幌馬車』みたい。
・本作も邦題の意味がよく分からないが、炎上する砦を指しているのか。
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