[コメント] ゾンからのメッセージ(2018/日)
一歩踏み出す決意ができなかった者。なんとなく留まってしまった者。邪悪を恐れ成長を規制された者。モワモワ、ガサガサ、ザラザラ、チカチカと心のざわめきがバリアを築く。外界への憧れや恐れは若者の特権ではない。時間はすべての人に平等に流れているのだ。
2014年2月の大雪でビニールハウス倒壊などの農業被害がでた深谷市で撮影されているのだが、あえてこの被災地をロケ先に選んだのだろうか。それとも偶然ロケ地が被害にあったのだろうか。いずれにしろ、この現実の農家(作中にもドキュメンタリーとして登場する)の方々は、この地を離れることなく、この地に再び生活の基盤を再建して、一生をこの地で終えるのだろう。
そんな彼らとの対比が、ゾンに閉ざされ止まった時間を生きる作中の人物たちの“何もなさ”を良くも悪くも引き立てる。現実的でありながら観念をカタチにする映画実習と、自然という偶然がもたらした現実を克服する復興作業。この正反対の「事実」が同じフィルムに定着されたことで、先のモワモワ、ガサガサ、ザラザラ、チカチカの顛末が、作為以上のよりリアルな爽快さを生み出している。
計算されざる「効果」もまた映画の醍醐味。
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