[コメント] フィラデルフィア物語(1940/米)
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前妻の再婚を妨害しようとする男のコメディ映画。
プライドが高く傲慢でわがままだが、傷つきやすいトレイシーの複雑な心をマコーリーが職務を投げ捨ててまでリードしていく展開はなかなか素晴らしかった。特にマコーリー役のジェームズ・スチュワートは高飛車な態度をとるトレイシーを非難することもなく優しく労わっていて、トレイシーが本当の心を開く展開にも納得させられるものがある。
女性をリードする役柄を演じさせるとジェームズ・スチュワートはやはり上手い。
ただこの映画はマコーリーがトレイシーの隠れた善の心を導くところからして、マコーリーとトレイシーが結ばれる方が理に適っていると思うのに、なぜ前夫であるデクスターと結ばれてしまうのか不思議。
それまでの展開にトレイシーがデクスターに惹かれるだけの魅力が彼に感じられればいいのだが、デクスターのした行動といえば、未練たらしくトレイシーの結婚を妨害しようとしたり(しかもトレイシーの父親のゴシップと取引にしてマスコミに記事を書かせようとしていたし)、終盤でマコーリーがトレイシーをリードしたことを彼女に誤解されているのを利用して無理矢理、トレイシーとの仲を復活させようとしたりするなど、どう見ても悪人キャラとして描かれているように思う。
デクスターがトレイシーをフォローするような描写がもっとあればあのラストでも納得がいくが、この映画のデクスターの描写では当初の予定だったトレイシーとキトリッジの結婚の妨害という彼の策略にトレイシーをまんまとはめたような見せ方で正直、デクスターの行動そのものに悪意が感じられてしまう。
特にラストの結婚式ではトレイシーを誘導して結婚するところからしてロマンスの欠片も感じられないし、それまで展開にしたってデクスターとトレイシーの絡みには2人の仲が進展するようなシーンがないのでどう観てもデクスターとトレイシーが結ばれる展開は筋違いのように思う。マコーリーの同僚のリズが彼に思いを寄せているという設定も唐突すぎる。
せっかくマコーリーがトレイシーの本来の魅力を引き出すシーンにロマンティックな要素が感じられただけに、無理矢理筋違いな展開で終結させずにマコーリーとトレイシーが結ばれる展開で終結させてくれた方が後味としてもよかったように思う。この映画でのマコーリーの扱いはかなりないがしろにされた感じで、観てて気の毒に思えてしまう。
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