[コメント] ハナレイ・ベイ(2018/日)
掛け替えのない者の死と向き合うには時間が必要だ。後ろにも前にも進めなくなってしまったサチ(吉田羊)にとって、流れた去った10年は短くも長くもない、ただ必要な心の解凍時間であり、向き合うべき対象は死者ではなく自分だと気づくための時間なのだ。
サチの目は決して笑わない。もはや“悲しみ”という感情すら表出しない。吉田羊の端正な顔立ちとぶっきら棒な男性的な身のこなしが、総てを拒絶するリアルを醸し出して息苦しい。その拒絶こそが悲しみなのだ。
そんな拒絶の悲しさに対して、クライマックスのサチの海岸の彷徨が型式的なお約束に見えてしまう。おそらく「拒絶」の強度と対を成して物語(映画)のもう一方の核心となるはずの、費やされた「時間」の量が伝わってこなかったからだろう。
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