[コメント] 鶏はふたたび鳴く(1954/日)
『煙突』系列の複雑なコメディ。今回は採掘塔が聳え立ち、停滞の時間が延々と続く。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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この停滞の持続が本作の新しい処だろう。伊藤雄之助の参加は何も物語を発動せず、停滞の延長でしかない。仕事のない男五人組と自殺志願の女三人組。鬱は東野英治郎にまで喜劇的に感染する。空疎な採掘塔は『8 1/2』(63)のマストロヤンニが建てた宇宙船発射台のように見える。三人組が共有しているペンダントの毒の件はもの凄く、何かの隠喩のようにも見える。
採掘塔は画的にもとても優れている。なか入ってモルモットみたいに歩行して車輪を回すのだ。吹き出る温泉により停滞の物話は笑劇的に終了を迎える。天然ガス採掘に失敗し、石油を求め、温泉が出る。冒頭で観光事業が上手くいかないと説明のあった村はこれにて軌道に乗るのだろう。作業者たちには何の関わりもないことで彼等は旅立つ。石炭採掘や原発のジプシーと変わらぬ存在なのであり、エネルギー産業はつねに彼等を末端で必要とするのだった。
別に美人でもない寂し気な佇まいの南風洋子がとても印象的。自殺を救われたあとの焚火に何度も何度も感謝しているのが美しい。豪快に微笑む三好栄子の智者振りが意外でいい。伊藤雄之助が余り面白くなく本作の欠点だが、札束の回収や最後の大アップは決まっている。ラストを飾る郵便局員の柳谷寛はさすがの味。小原撮影もとてもいい。
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