コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] エレナの惑い(2011/露)

本作もファーストカットとラストカットは円環のように同じ場所、同じカメラポジションのカットだ。しかし、被写体は違う。なんというアイロニー。まさか、こゝに連れてこられようとは。
ゑぎ

 タイトルロールのエレナは元看護士。病院で知り合い結婚した富裕な夫と高級マンションで暮らしている。お互い再婚同士でそれぞれ子供が独立しているのだが、エレナは夫の娘と折り合いが悪く、夫はエレナの息子の家族が頼ってくることを良く思っていない。このような関係の中で、エレナが決然と行動する様が描かれる。複雑な感情は伝わるのだが、邦題のような「惑う」感覚は殆ど受けない。

 前二作(『父、帰る』『ヴェラの祈り』)と異なり、モスクワを舞台とするので、随分と都会的な雰囲気のシーンが多いのだが、エレナの息子家族は郊外に住んでおり、巨大な煙突のあるだだっ広い風景が巧く取り入れられている。ラスト近く、エレナの孫サーシャが仲間達と喧嘩に向かう手持ちのシーケンスショット、未整備の空き地での乱闘場面は突出した強度で特筆すべきだろう。これがあるから、エピローグの複雑な感興が増すわけだが、いや単純にこの場面の演出に瞠目する。

 あと、スポーツジムのプールのシーン等で使われるヒッチコック風(バーナード・ハーマン風)の劇伴が耳に残る。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。