[コメント] アリー/スター誕生(2018/米)
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ジョージ・キューカー監督による『スタア誕生』(1937)のリメイク作品。これ自体が既に何度もリメイクされている名作。
ただ、「名作」とは書いたものの、実はこの作品は私は苦手。栄光の絶頂にあった人物が堕落してしまい、それまで保護していた人物に逆に守られるというパターン。これはかつてハリウッドの黄金期には映画ではそれなりに多く作られているパターン化された物語だった。
オリジナルの『スタア誕生』、『スタア誕生』(1954)および『スター誕生』(1976)を観てきて、良い作品とは思うものの、観ていて辛くなるため、どうにも評価が上がらない。 そんなこともあって本作も辛くなると思って劇場ではスルー。レンタルで視聴となったが、なんかとても素直に観る事が出来た。たぶん前二作と較べると、痛々しさがあんまり感じられなかったからだろう。
多分それは男女の関係よりも音楽の方に重点が移っていたからからだろう。主演にレディ・ガガという当代随一のロック歌手を起用したことで、歌の方に重点を置いたことで、設定的にもかなり説得力が増した。
具体的にはアメリカ音楽のジャンルの移行期を描いた話として考えると良い。本作は昔からのアメリカ伝統であるカントリーミュージックからロック、そしてニューミュージックへと移行する音楽シーンの中での一エピソードとして見ると、なかなか趣深い。
今もカントリーミュージックはアメリカの魂と言われ、ファンは多いが、純粋なるカントリーからロックを取り入れたものも一つのジャンルとして確立されており、ポップスの始まりのジャンルとなるし、現在でもこのジャンルにこだわるミュージシャンもいる。本作の主人公の一人ジャクソンはそのこだわりを持ち続けるミュージシャンである。ただ、このジャンルは既に80年代の頃にはだいぶ衰退していて、以降は熱烈なファンに支えられて細々と続けられてるジャンルとなる。
この作品の年代ははっきりしていないが、おそらくは80年代初頭くらいだと思う(今の時代でも一応可)。まさにカントリーロックの衰退期に入っており、そこから新たにポップスのジャンルが台頭していく。それがジャクソンとアリーの関係になっていく。カントリーロックにこだわるのジャクソンは、音楽性を転換できない人で、故にカントリーロックと共に衰退していく。一方、それを踏み台にして新たなジャンルであるポップミュージックへと転換できたアリーが次世代のロックスターの階段を上る。
この音楽の関係をそのまま人間関係に重ねたことで本編は単なる恋愛ではない時代性を背景にした人間関係となっていく。
本作を面白いと感じたのはそこにある。止めようのない時代の流れを実感できる、世代の物語になっているからだ。
わかりきってるパターンの恋愛要素よりもそっちの方で見所があったので、それなりに点数は高めに。
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