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[コメント] 燃える平原児(1960/米)

本作も極めて美しい構図が連続するシネスコ映画。まずは、何よりもその点を書きたい。クレジットバックは、スティーヴ・フォレストエルヴィス・プレスリーの兄弟が夕闇の中、乗馬で帰宅する場面。
ゑぎ

 二騎のロングショットを繋ぐ。丘の上から俯瞰気味にとらえた牧場のショットで監督名が出るのだが、もうこの冒頭から構図の端正さにゾクゾクしてしまう。

 家に灯りがない。2人が怪訝に思いながら家に入るとサプライズパーティ。父母や友人たちとのディナーシーンとなる。これは、全編を支配する不安と安堵、虚と実の見せ方の象徴でもあるだろう。また、この場面の和気あいあいが、中盤以降のプロットに対比的に効いて来るのだが、後から考えると、ちょっとワザとらしくもある。

 兄弟の父親はジョン・マッキンタイア。フォレストは前妻との子で、プレスリーの母はドロレス・デル・リオ。彼女はカイオワ族なので、プレスリーはハーフだ。友人たちは、男3人、女2人。リチャード・ジャッケルL・Q・ジョーンズ、そしてバーバラ・イーデンら。サプライズパーティのすぐ次の場面でL・Q・ジョーンズの家がインディアンに襲われ、こゝから、白人対カイオワ族の対立図式が強硬化するという展開。

 カイオワ族側の重要人物バファローホーンはロドルフォ・アコスタだ。彼がデル・リオとプレスリーに密会するために、牧場に度々現れる、という場面の緊張感もいい。プレスリーとデルリオは、カイオワ族の村へ行き、交渉をしようとするが、デル・リオが姉に相談しても、聞いてもらえないのだ。

 プレスリー達の家族は白人移民たちともカイオワ族とも戦わないといけない、という複雑な様相を呈していき、ほとんど混沌のうちに終わる、いびつな構成を持つと云ってもいい映画だが、しかし、これも本作の魅力だと私は思う。ラストの、丘の向こうへ馬で走って行く単騎と跛行しながら追う男のショットに女がフレームインする構図も素晴らしい。また、プレスリー達の家の屋根付きポーチに、赤い花の咲いた木(椿のような)が絡みついているのだが、随所で赤い花が画面内でアクセントになるショットが現れる。この造型も特記すべきと思う。

(評価:★4)

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