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[コメント] ビール・ストリートの恋人たち(2018/米)

何でこんなに凡俗な邦題なのだろうと思っていたら、その通りの内容だった。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







困難に直面したカップルがたっぷり描かれる一方、その原因については曖昧で要領を得ない。ここが重要なのだと思うのだがそうしない。レイプ事件の説明はやたら駆け足だし、白人ポリスの単なるチンピラな造形など簡単に過ぎるだろう。ジェンキンズはメロドラマ作家なのだろう。

彼の方法は自覚的なもののように見えるときがある。白人でさんざ描かれた、生きるのが困難な若いカップルというモチーフを、まるごと黒人に置き換えて脱構築を試みたということなのかも知れない。

プエルトリコでレジーナ・キングは鏡の前で鬘を被る。ハリウッド・コメディなら、巧く娼婦に化けたと小躍りでもしそうな場面だろう。しかし彼女は鬘を取ってしまう。この振る舞いからは、ハリウッド過去作の批評を本作は行っているのだ、という宣言が読み取れそうに思う。というか、読み取らないと他に意味がよく判らない。

それは興味深いのかも知れないが、余りインパクトは感じられなかった。上記のプエルトリコの件は、黒人対白人の二項対立を複雑化しているが、二項対立を弱めたとも取れる。回想を折り込む話法は上出来だが、狂信者の母親や弁護士が置き去りになる辺り、原作との兼ね合いが失敗しているように取れる。撮影美術は前作よりも低調で特に観るものがなかった。キキ・レインを観ているだけで十分な作品ではある。

(評価:★3)

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