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[コメント] Lost & Found(2007/日)

人物の運命論的なドラマが交錯する多彩な物語構成と繊細なカメラによる視点が、映画を凝視させるSO-SO作品
junojuna

 繊細なる抒情と確かな技巧を駆使して、たおやかな詩情をものとする作風が老練な想像性を伺わせる作品である。すでに海外の映画祭で評価が確立された俊英・三宅伸行監督の静かな佳作である。山形国際ムービーフェスティバルのスカラシップ作品として制作された本作であるが、舞台となっているのは山形の村落に静かにたたずむ駅舎である。1932年製作のアメリカ映画、エドマンド・グールディングによる『グランドホテル』を彷彿とさせる群像劇は、ドラマティックな構成を用意しながらも、その劇空間を切り取るカメラのリアリスティックな描写が清新な抒情を生んで巧さが光る。しかし、少しばかり背伸びが見える作風ではある。カメラが技巧的に動きすぎるきらいがあったり、モンタージュに挿入される無人ショットなどが必要以上の存在感を示してしまうところなどである。それでも、三宅監督の手腕が確かな個性として息づいている点は見逃しようもなく、彼に潤沢な予算で映画を撮らせることができたなら、一層面白い映画をものにするであろうことは自明である。まだまだ全貌が見えてこない挨拶代りの作品として、ひじょうに今後が楽しみな作家である。

(評価:★3)

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