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[コメント] Falling life(2004/日)

低予算作品でありながら映画に企てようとするシネマライクな果敢な取組み、そのセンスの片鱗はSO-SOな若気
junojuna

 初長編作品『ロックアウト』が、ゆうばり映画祭で話題になり、2010年春、劇場公開となった高橋康進監督のセンス溢れる短編作品である。8mmとDVを駆使した映像は、70年代刑事ドラマを髣髴とさせる景観的魅力と、ゼロ年代新宿の猥雑な空気感を体現させて味わい深い。猥雑な舞台設定を選ぶのは、監督の私性の表れでもある。スコセッシが若気の至りで描いたニューヨークのアナーキーな感覚と通ずる対象なき怒りは空転して哀愁を帯びる。また、郷愁を誘う新宿の描写は、映画的な都市景観について造詣が深い監督の映画観に由来するものであり、グロテスクな魅力を湛えてフォトジェニックである。色調もセンスの程が伺えて、次作『ロックアウト』に繋がる作家性を忍ばせている。その意味では確度の高い映画人であることが伺い知れる。映画の匂いを熟知した作家の誕生は、日本映画に風穴を開けることができるか。オタク以上の何者かである時、世界は彼に未来を託すだろう。

(評価:★3)

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