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[コメント] 女医の記録(1941/日)

戦前らしい国策宣伝映画で結末は初めから判っておりドラマはショボい。美点は医療を受け付けない旧弊な田舎の描写でとても興味深いが、宣伝映画につきどこまで本当か判らないのが難。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







清水演出としては、市村美津子のみねちゃんを何故か背中からばかり撮ろうとするのが面白い。田中絹代佐分利信に呼び止められる中盤の件は、キャメラが反転しても相変わらず背中を向けているし、ラス前の廊下の件も背中だ。不思議な描写である。しかしそのくらいで、路上歩行や子役のあれこれも清水印だが取り立てて面白味はない。物語から排斥される怪しい行者の仲英之助は清水的人物だがやはり地味。

近代的医学VS衛生思想ゼロの村の物語は木下の『生きてゐる孫六』が思い起こされる。日帝は意外にも伝統破壊の近代思想なのだ。住家を囲んだ樹木を風通しが悪く病気の元だと行政が伐採を奨励していたという話は耳新しく、何でも指導するものだ。川で泳ぐのを児童全員に禁じるのもいかにもやり過ぎ(トラコーマでは仕方ないか)。女医たちが支払を怖れる村人にただですよと云うのは詭弁であり、税金から出ていますと云うべきではないのだろうか。滅私奉公の収束を男女の淡い恋愛にまぶして纏めたのは精一杯の処なんだろう。絹代が弁当のおかずを尋ねての児童の返事が「塩」という科白が印象に残る。

(評価:★3)

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