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[コメント] 元気で行かうよ(1941/日)

豪華共演作が凡作になるのは戦前も同様らしい。美点は山師と給仕の生業について詳しいこと。笠智衆が完全な悪役で登場するのは珍しかろう。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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父の河村黎吉の金山探しを、もう止めてと訴える田中絹代。仕方のない父親だなあと見ていると、金山の評価が良好で大喜び。絹代は河村に御免なさいと謝ったりする。父の深謀遠慮と娘の女の浅知恵、というのは現代の物語作法には滅多に見られない展開で驚いた。驚いたが別に面白い訳ではない。

佐野周二は給仕の和田昭人をぶん殴り、抗議に会社へ来た姉の絹代にその理由について自らの正当を語り、絹代は恐縮する。ここにも女の浅知恵の主題が出てくる。暴力に寛容なのは当時らしいが少年の顔に痣まで作っては駄目だろうに。この男尊女卑の感じを野田高梧は戦後まで持ち越したように思う。金の行ったり来たりはギャグなんだろうがまるで面白くない。

さらに佐野が工夫たちに対しても暴力的なのは驚き。ドラマは明らかにこの佐野を英雄視している。荒くれ者たちのなかでも颯爽としていて格好いい、と云った風なのだ。直前のプロレタリア文芸などなかったかのようで、ここでは労働者たちはただの不気味な存在でしかない。

上記の金山評価を佐野が行うに当たってのプロセスと、佐野・笠のあわや喧嘩の件の続きは多分フィルムが脱落しているのだろう。笠の喧嘩は観てみたかったが、まあ評価が変わることはあるまい。疲弊した佐野と上原謙の汽車での帰省という導入部は期待させたが、まるで続かなかった。

(評価:★2)

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