[コメント] カツベン!(2019/日)
五七調の台詞が耳に心地よく響く。今からほぼ100年前の世の中の雰囲気を適度に感じさせる美術も良い。基本はのどかなどたばたコメディではあるが、女優をめざすヒロインがたどったであろう辛い過去を直接、見せずに描いた心根はうれしい。
一つの世界の時代が大きく変わりゆく中で、やがて消えていく、去っていくものへのあたたかい眼差しも感じられる良作。
高杉健吾、井上真央、竹野内豊は、それぞれいかにもな役を、いかにもそれらしく演じてみせたのは立派。永瀬正敏は渋いベテランの味で、竹中直人はちょっとはしゃぎ過ぎなところもあるが情けない姿を見せているのは良い。あと小日向文世は本作のような悪役の方が似合ってると思う。
他にも脇を固める役者の味を、よくわかって引き出した周防正行監督の腕は、往年のオールスター競演映画をさばいた、かつての古き良き監督たちを思い起こさせる。
後に残るものはそう多くないが、全編通じて楽しくみることができ、観て良かったと言える一本だった。
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