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[コメント] 私の名前はジュリア・ロス(1945/米)

雨の中、コート姿の女が建物へ入って行く後ろ姿カット。ちょっと斜め構図。掃除婦との会話も、ずっと後ろ姿。手紙を手に取り読むカットで、ティルトアップして、ニナ・フォックの顔が映る。これはカッコいい登場シーンだ。
ゑぎ

 始まってすぐに、フォックは、デイム・メイ・ウィッティと息子のジョージ・マクレディによって拉致される。監禁された部屋の窓には鉄格子。窓の下は断崖と白波が見える。ウィッティが出ていることもあり、ヒッチコックを想起せずにはいられない。この屋敷、階段もいいし、部屋間の猫の通り道だとか、もっと面白く見せないと、とも思う。終盤で、階段の板を外して墜落死させようとする部分もドキドキするが、ヒッチコックなら、もっと、上手く見せることができただろう。と云うのは詮無いタラレバだが。

 しかし、マクレディがナイフでフォックの下着(?)を切り刻んだり、クッションをめった刺しにする、といった狂気の表現は面白い。ウィッティも、息子の異常さには憂いている、というのもいい。あるいは、海岸でフォックが無理やりキスされる場面の演出も印象に残る。マクレディの肩越しに、フォックの顔の、上半分だけを映したカットが、尋常じゃない不安を定着する。

 あと、ジョセフ・H・ルイスは暖炉好きだ。本作でも暖炉の炎の見せ方は綺麗。また、屋内、屋外とも、小さなドリーの前進移動が端正な演出だ。これで、終盤クライマックスのフォックの動き方(幽閉された部屋から海岸への移動)がもう少し分かりやすく画面で提示されていれば、もっと満足度が高まったと思う。ちょっとバタバタして終わった、という感想を持つ。

(評価:★3)

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