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[コメント] 真夜中の顔(1958/日)

一幕物スリラーの傑作。視線の交錯だけで75分間息もつかせない。ギャングの造形見事な梅野康靖から、殆ど死体で寝ている贅沢な桂木洋子に至るまで、全ての俳優のキャラが立っていて素晴らしい。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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撮影の見事さは冒頭のダンスを追いながら部屋中を見せるクールなショット連発ですでに確認でき、これが最後までダレない。マダムの水戸光子は正義感との葛藤の表現がさすがで、気の毒な編集長の笈川武夫は味があり、いつも正義感の役処の信欣三内藤武敏がグウタラな役処で面白い。おいちゃんも持ち味出していていい。

終盤、さらにもうひとヒネリあるのだろうかという期待は、黒幕政治家滝沢修の警察へのギャング殲滅というもの凄い指示によって期待以上に達成される(だから警察の小沢栄はいつも通りの悪人なのだ)。保守政治家とギャングの関係というのはいつでもこのように生臭いものなのだろう。バーみたいな風俗店でなら、こういう連中にとつぜん名乗りをあげられてもどうしようもない、という潜在的な恐怖が顕在化した処に本作の恐ろしさがある。

外車から覗く滝沢の顔と、中川弘子三國連太郎の(辞表を撤回した)記者への「書いてね」という依頼で、本作は素晴らしい着地点に降り立っている。本作は正義のために書く記者を応援する映画であった。銀座六丁目並木通り、一晩終えてキャメラがはじめて外に出る。早朝に終わりを迎える映画は本当にいいものだ。

(評価:★5)

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