[コメント] 性の起源(1967/日)
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松尾嘉代の肉体とアパートの配席の両方で父の座を息子が奪う物語で、息子は何も面白くなさそうにこれを実行する。まるで昆虫の生態のように。子供が成長したら親はその分衰えるのだと乙羽は繰り返す。いったい、これほど亭主に無償の愛を捧げられるものだろうか。この突き抜け方が異形だ。
殿山の症状はノイローゼ(抑うつ症)と云われるが、昨今の職場うつみたいなものなんだろう。冒頭の悪夢はベルイマン『野いちご』を想起させられる。窓際族という70年代後半の生態を新聞切り抜きの毎日で先取りしており、辞職願出して本当に嬉しそうな笑顔が素晴らしい。
本作の瑕疵はレイプで事を運ぶ物語でこれを是とするのはちと納得できない(カットバックで進行する砂浜のほうに警官が現れるのだが、本当はレイプ現場に現れるべきなのを、やはり親が子の犯罪を引き受ける、ということなんだろう)。『』ほか当時の常識だった訳だが、なんでこんなに流行っていたのだろう。OPと松尾の店の遊具で出てくる泡の玩具がエロい。乙羽が病室で鳩捉まえるショットも驚きがある。赤座美代子は本作が映画デヴューらしい。
京都の風俗描写が麗しい。何度も出てくる山門は八坂神社か。商店街のアーケードは今とおんなじだ。鴨川沿いの喫茶店は有名なジャズ喫茶の「リバーサイド」ではなかろうか(劇中は「リバーバンク」という英語の看板が見えるが)。市電も京福も美しく撮れている。京都はこの頃がいちばんいい街だったんだろうと思う。
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