[コメント] 阿部一族(1938/日)
知る限りこれぞ本邦右翼映画の最高峰。殉死待望の倒錯した集団心理が切々と語られるもの凄さは悪夢を突き抜けている。主権在君とはつまりこういうものだ。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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冒頭の殉死描写は凄まじい。寺の鐘楼映して鐘をゴンと鳴らして字幕「殉死」。飼犬に一緒に死のうと「忠義のためじゃ死んでくれ」。急激なティルトダウンで墓。ヒンドゥーのサティ―みたいなものだ。鴎外「興津弥五右衛門の遺書」の世界。ミシマ『憂国』は本作のパロディに位置するだろう。 本編はこれが敵わぬ阿部一族の悲劇を描く。主君細川忠利逝去、なんでわしらも死ねんのか。「お許しなしの追い腹」と云われ、犬死と云われる。何という話だったか忘れたのだが、第二次大戦の敗戦を知って「私の息子は犬死になった」と泣く母を描写したものがあった。同じなんだろう。 「ご政道は秩序じゃ」は彼等の情と衝突する。「武士らしく振る舞え」という父の遺言が息子らにのしかかる。「子どもたちは先に死んでもらうんだ」の一夜、座敷に一同会しての沈黙が重く、轟々鳴る風が恐ろしい。「これも前世からの約束事」。そして日蓮宗の太鼓が乱れ撃ちに叩かれるのであった。再見。
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