[コメント] ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像(2018/フィンランド)
粗筋だけ追えば、商売下手な老画商の最後の冒険と、ないがしろにしてきた家族との関係修復の話ってだけなのだが、主人公のキャラ造形にエッジが効いていて変に心がざわつく。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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エッジが効いてると言っても、地味ではある。
厭世的なキャラクターなうえ、相手の気持ちを慮る能力に少し欠けていて、家族に対してそれがダイレクトに出てしまう。その程度。 しかし、彼の風貌や表情がかもしだす雰囲気と、ところどころで表出する彼の地とにギャップがある。地味に。
そんなこと日常生活ではありきたりなのだが、映画でのこの地味なギャップってありそうであまりない気がして。 だからなんだかリアルで、心がざわつく。
そもそも、主人公が取り扱う絵画は、数百ユーロで仕入れて、1000ユーロぐらい乗っけて売っているもの。 大一番の絵だって仕入れ値は10,000ユーロ。映画って考えるとスケールが小さい。しかし、だからこその現実感。
強く印象に残るショットが1つ。 キリストの絵を買うと言った顧客の滞在先のホテルに主人公が絵を持って赴くも、やはり買うのはやめると言われた後、主人公が愕然とした表情でエレベーターで降りているところ。
前後の流れからして、このエレベーターのショットは必ずしもなくても成立している。 しかし、今までいた場所が相当な高層階にあるという、顧客の属する世界の華々しさ。 そこから落ちていく自らの心持ちとのシンクロ。さらには、ガラス張りのエレベーターの外に見える夜景なんか目に入るわけもない彼の心持ち。 そんな、いろんなことが感じられる。しかも、このショットが意外と長くて余韻十分なのだ。
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