[コメント] つづり方兄妹(1958/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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別に望月優子にイジメられはしないけど。そして映画は長女の竹野マリのものだ。口唇裂を取り上げた映画は新藤の『狼』があるが、本作のほうが詳細。手術したら治るのにと云われている。 貧乏映画のなかでも本作の美術は傑出しているだろう。住まう小屋に畳はなく板間にささくれだった御座が引かれているだけで、小屋みたいだと森繁が云う。ここに川の字になって寝る一家はの描写は、ひとつの典型たり得ている。私的ベストショットは頭師が先の開いてしまった靴を足先から払って崖下に落とすアクション。
本作の望月優子は銀縁眼鏡をかけていて私には貧乏に見えないのだが、当時はこの小物は違う意味を持っていたのだろうか。彼女の子供への「貧乏を僻んでいるんだ」という詫びが本作のクライマックスなのだと思った。あと、左卜全のたよりない藪医者は悲痛である。飼うと不吉な四ツ目の犬とは何だったのだろう。
物語は最後に近所のやっかみが矢庭に主題化されるなどドタバタする処があるのが残念。香川京子ら先生たちの学校移転反対の運動(元兵器廠の場所で再軍備の一貫と懸念されている)への少年の共感も、先生が云った通り云っているぐらいの印象で薄いのだが、当時の空気を確かに伝えているし、丘のうえの地蔵さんが効いている。茨木の話。
再見。原作は小学校の先生が子たちの綴方を朗読してくれたものだった。とてもいい作文という記憶がある。不確かな記憶だが、頭師に当たる少年は自分のためにした貯金なのに、母親が醤油が切れたと訴えたので醤油を買い、大雨のなか瓶を両手で抱えて帰って肺炎になり死んでしまう、のではなかったか。
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