[コメント] 女優と名探偵(1950/日)
プロットとしては、銀座の雑踏で財布を掏られた探偵の日守新一が、女スリの西條鮎子を追いかけるドタバタ劇。所持金がなくなった探偵は有楽町辺りだろうか、線路下の事務所に帰るが、管理人の坂本武から家賃の取立てがあり、さらに学生高利貸しという設定で、学生服を着た河村黎吉からも返済を迫られる。このとき、新聞に女スリを捕まえると賞金10万円、という記事を見て、坂本と河村からお金を借りて、女スリを追いかける、という出だしだ。
新橋駅から女スリを追って列車に飛び乗り、車掌の増田順二の検札をうまくかわして、着いたところが松竹大船撮影所だ。女スリを追って撮影所に入ろうとするが守衛に止められる。そこへ佐野周二の乗った自動車がやってきたので、車に隠れて入場する(佐野は、幹部という雰囲気がある)。以降ほゞラストまで、撮影所の中を舞台として3人の守衛との追いかけ合いのドタバタが続くのだ。
主な登場スターを記載しておくと、最初に入った部屋が、ニューフェイスではなく「オールドフェイス」の審査会場。木暮実千代と堺駿二が審査員でいる。老人たちが変な衣装で踊ってるのが結構シュールで、私の好みだと、こゝが一番好きかも知れない。次に撮影スタジオに入ると、ドアの上の「ホンバン」のランプが付く。津島恵子、高橋貞二、桂木洋子、山内明らの撮影現場。こゝで女スリだと思った女は、女優としての西條鮎子本人だった(女スリは、西條に似た女だった)、というヒネリがある。あとは、笠智衆が鼻をかみながら出てきて、日守が逃げ込んだゴミ箱に鼻紙を捨てる場面があったり、その他怒涛のように、田中絹代、淡島千景、若原雅夫、高峰三枝子、佐分利信、森雅之、堀雄二、佐田啓二らが、皆、財布なりバッグなりを掏られたと云い始めるといった具合だ。
あと、2人の西條の二重露光ショットだとか、最後は日守も本人が登場し、二重露光で二役を見せる。他に演出で驚いたのは、沢山の畳を立てかけて干している部屋での守衛との追いかけ合いの場面だ。固定ショットで3人の守衛をあちこち動かすのだが、日守は、色々な畳のかげから、顔を出したりひっこめたりする。これっってどうやって撮影したのだろうと思う。いずれにしても、本作の日守のコメディ演技の器用さには驚かされる。それと、本作の西條鮎子はとても綺麗に撮られている、ということも明記しておきたい。
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