[コメント] 新東京行進曲(1953/日)
本作は、高橋の小学校時代の同級生や、恩師との偶然の再会と、現在の境遇、再会後の交友関係を中心に描いた映画、と云うことができるだろう。しかし、それにしても、世間は狭い的なご都合主義が過ぎる、という感覚になる。
例えば、同級生との再会は、新聞社の配達センターみたいな所で三橋達也。自動車強盗を追っていた時に、民家の聞き込みで大坂志郎。有楽町駅の前で、高橋は淡路恵子を助けるのだが、淡路の同僚の北上彌太郎も同級生。もう一人、確か大坂だったと思うが、交流が続いてた同級生で寿司屋の桂小金治がいる。そして、恩師の須賀不二男とは、闇カジノの取材時に会う。また、高橋が懇意にしている警視庁二課の日守新一には、娘の北原三枝がおり、日守は、高橋と娘をくっつけたがっているのだが、北原の恋人は大坂志郎なのだ。なんて世間は狭いことか。
ちなみに、大坂志郎は都電の車掌。北原は上野の土産物屋で働いている。路面電車を運転する大坂の横に北原が乗って来て、土産物の人形を渡すシーンがいい。高橋と淡路のシーンでは、日比谷で二人が皇居のお堀側から、第一生命ビル辺りを見て「東京で一番好きな場所」という場面が有名だが、こゝは確かに、全編でも一番いい雰囲気のシーンかも知れない。
あとは、桂小金治の寿司屋で行われる同窓会のシーンか。小金治の母親の望月優子も加わって、子供時代を回想する。理科実験室で須賀先生に叱られたこと。「フラスコさんに謝りなさい」という科白。226事件の当日にも、クラス会で集まっていたこと。流行歌「東京行進曲」の中の歌詞「あだなとしま」って何?という会話。
さて、お話は彼らの恋の行方も含めて、後楽園球場で収束する。北原がミスコンテストに出場するのだ。同級生皆集まってのエンディング。なかなかのビターエンドだと思う。私はハッピーエンドよりもむしろ好みではあるが、しかし、本作の川島は、広げたプロットをまとめかねた感がある。
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