[コメント] 母親たち(2018/仏=ベルギー)
アリスという女が異常に癇に障る女なので、彼女が危機に怯えるサイコサスペンスと見る限りなんと不愉快で感情移入しかねる作品かと呆れていた。だが、その苛立ちは終盤に至って不思議に腑に落ちる人生論に変貌するのを感じさせられる。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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なんと、セリーヌはさかんにアリスの妄想に晒される可哀想な女と思っていたら、少なくとも終盤にはちゃんと強固な意志をもって夫と隣家夫婦をくたばらしてしまい、可愛いテオ少年を合法的に養子にしてしまうのである。確信犯だ。だが、そこには恐れや憎しみは不思議につきまとってこない。アリスは何といっても同情に値しないアグレッシブなサディストである。そんな女が自分と可愛いテオのあいだを裂こうとするのだ。そして男どもは事なかれ主義で物事をいいように片付けようとする。皆殺しにしてどこが悪い。
そう思えるのはセリーヌはきわめてまともに自分の愛をとらえているからだ。彼女はテオにこう言う。「私達は決してほんとうの親子にはなれないわ。お互いに胸にぽっかり空いた穴をふさぐ術すらも知らないのだから」なんて「わかってる」台詞なんだろう。彼女は狂ってなんかいない。自分のやったことを冷静にとらえている女なのだ。
海岸線を走って消えてゆくふたりには、そっと見送ってやりたい共犯者意識を感じた俺だった。
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