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[コメント] 橋(1959/日)

元提督笠智衆の戦後という主題は半端だが、資本家細川俊夫の造形が抜群。憎たらしくて腹立つけど腹立てちゃいけないと自制させられてしまうキャラなのだ。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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細川の基本イヤミな男なのだが、一分だけ常識を残している匙加減の造形が素晴らしい。一分だけは善人なんだ。石浜朗の故郷の土産である徳利を細川は高価と知って受け取らない。「貰う理由がないよ」。資本主義のモラルの徹底ぶりを示すのだろう。一方、さくさく貰う笠は贈与の関係性を代表している。これを盗む岡田茉莉子、笠の𠮟責により返還、という展開はやや無理気味だったが云わんとする処は判る気がする。間に入った福田公子は同情を誘うが、彼女こそ資本家に寄生したずるい我々の似姿かも知れない。

敗戦直後はアプレと叩かれていたようなエコノミック・アニマルに、最後は笠も岡田も詫びを入れなければなくなる、という世知辛さ。

部隊を全滅させてしまった、軍人は敗戦の責任を負うべきだ、と軍人恩給辞退してニコヨン(ひどい云い方だ)に精出す笠智衆なのだが、それ以上の責任は出てこなかった。秀逸なのはビルの受付して、ワンフロア持っている細川と出くわす件だろう。渡辺文雄らは賑やかしにとどまり、岡田のロマンスはどうでもいいようなものだったが、外国資本の会社はすぐ馘切られるという件は印象的、本当か思い込みか知らないが。水戸光子のマダムは素敵だ。タイトルは勝鬨橋とラストで出てくるのは判るのだが、含みはよく判らない。

(評価:★4)

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