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[コメント] 絹代の初戀(1940/日)

このタイトルが秀逸。初恋だったのだ。万感胸に迫るの感慨がある。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







初恋を妹に譲った田中絹代。それは小さな一目惚れで、小ささに見合った小さな話なのがいい。おそらく西洋のロマンスの翻案じゃないのかと思われるが構わない。

河村惣吉はそれこそ『最後の人』の翻案だが、馘首になって悄気ているのに絹代が喜ぶ件がいい。佐分利信の専務にずけずけ物云う利発な井川邦子(デヴュー作)がいいし、それ見て惚れる佐分利信の人物が好ましい。そして、姉妹の三角関係が表面化して以降最後まで、佐分利が登場しない構成がいい。

絹代と水戸光子の掛け合いが面白い。「はい、(煎餅)焼きたて」「有難と。旨いわ」「そりゃそうよ」「お世辞よ」「ふ、あれだ。お番茶」「有難と」「出涸らしよ。あんたはそれで沢山」「あれだ」江戸っ子ぽくていい。佐分利と坪内美子のさくさく打つ碁もいい。手つきが驚くほどいい。いいこと尽くめの佳作。すでに映画法ができているのにノンビリした作品を撮ったものだと感心させられる。

絹代の櫛がぽろっとテーブルに落ちて、水戸光子がさっと髪に戻す珍しいショットがあったが、あれは絹代の動揺を示す演出だったのか、それとも水戸の即興だったのだろうか。煎餅屋の描写も貴重。

(評価:★5)

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