[コメント] 戦争と平和(1919/仏)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
さらに何度も「私は告発する」という字幕が入るので、昔、『我告発す』というガンスの映画を大阪南森町のプラネット映写室という場所で見たことを思い出した。見終わって調べて分かったが、ガンスは本作の題材を1938年にリメイクしており、以前見た『我告発す』は本作のリメイク版ということだ。(原題は本作も「私は告発する」という意)
冒頭、主要登場人物一人一人、紹介がある。人物に、剣や犬が二重露光でかぶさり(剣のような人、犬のような人ということ)、キャラクターを補完説明するのが面白い趣向だが、このあたりの画面も実に安定感がある。
前半の舞台はプロヴァンス地方。物語はお祭りの場面からスタートする。主人公はジャン。その隣人で人妻のエディットとの恋と、エディットの夫フランソワとの三角関係が、全編を通じて描かれる。本作でも、前半は息をのむような、ディゾルブ繋ぎの抒情的なカット・ズームインが見られる。例えば、川辺の二人の場面なんかは絶品だ。夫のフランソワは激しい気性の持ち主で、エディットを責めるのだが、フランソワが背後からエディットの肩を揺さぶるカットでは、乳房、乳首も露わになる。
そして、欧州大戦が三人の運命を狂わせる。年上のフランソワは先に召集され戦場へ行き、ジャンは士官学校を経て尉官で戦場へ赴く。二人は奇しくも同じ隊で再会するのだが、フランソワは未だ兵卒で、上官となって現れた年下の恋敵に、不貞腐れて対応する。前半は悲惨な戦闘シーンはあまりない。お互いにエディットのことを案じているという部分で和解し、二人でエディットのことばかり話をする、という展開。
銃後のエディットの顛末についても、サラッとだけ触れると、進駐してきたドイツ軍兵士に監禁され、ドイツ兵の子供を産む。敵兵に襲われる場面は鉄兜の影で表現される。
後半の戦争場面では、実写フィルムも使っているのだろう、悲惨な戦場が映される。さらに終盤は、死者の行進が延々と続く、ゾンビ映画の様相を呈する。このあたりはちょっとクドくも感じるのだが、しかし全編に亘って堂々たる演出で、反戦映画としても立派だが、画面の見応えも十分だ。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。