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[コメント] 花荻先生と三太(1952/日)

相模湖近くの山間の小学校。その先生、生徒たちと周辺の人々を描く、鈴木英夫作品。配給は大映だが、劇団民芸の企画作だ。学校の体育館なんかで上映される、いわゆる児童映画の類だと思われるが、民芸のベテラン勢が多く出演しており、なかなかの豪華キャストなのだ。
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 校長先生は清水将夫。その奥さんも教師で細川ちか子。村長に宇野重吉滝沢修がPTA会長だ。タイトルロールの新任の女性教師は津村悠子。もう一人のタイトルロール、三太の父母が、多々良純高野由美。このあたりが主要キャストだ。冒頭近く、村長の宇野とPTA会長の滝沢が小学校の校庭でシーソーをしているという謎にシュールな場面もある。また、細川ちか子先生の土瓶に、子供達が青大将を入れる、悪戯のシーケンスも愉快な場面だ。結局、蛇を画面で見せない、という演出の選択も潔い。

 あと、村の住人でいつも喧嘩ばっかりしている夫婦として加藤嘉山田五十鈴が出て来る。実生活でも夫婦だった二人なので、楽屋オチ的な意味合いもあったのかも知れない。左卜全が間に入って仲裁する。後半の相模湖まつりのシーンでも再登場した山田と加藤が、必要以上にベタベタするのは実生活の揶揄だろうか。

 尚、鈴木英夫らしく、全編、構図はほゞ完璧だと思う。冒頭近く、水車を画面手前に、右端奥に三太を置いたカットで、まずガツンとやられた。

 終盤は、音楽学校の教師に招聘された花荻先生との別れのシーケンスになるが、校庭で彼女が別れの挨拶をする場面も、仰角構図の連打で心揺さぶられる。そして、バスの出発を見送る子供たちが、バスを追いかける演出が凄い。三太ら五人が、山道をショートカットして、バスの前に出るのだ。この演出には呆気にとられてしまうではないか。

(評価:★4)

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