[コメント] もみの家(2020/日)
この映画も、吃驚するような上手い演出だとかは無いし、少々インパクトに欠ける挿話の連続だとも思うのだが、しかし、奇を衒わない演出で、全編きめ細かく作られている。まずは何よりも、南沙良を愛でるための映画として、十二分に成立していると思う。
吃驚するような上手い演出は無い、と書いたけれど、少なくも、夕景の高台の場面、南沙良と中村蒼が、画面奥の町や田畑を望むシーンは、とびっきり美しい画面造型だ。こゝの科白のやりとりも好感を持つ。今どきのことだから、ポストプロダクションで、盛っている、ということもあるかも知れないが。
また、本作は、佐々木すみ江の遺作。こういう思春期の成長譚に老人を絡めるのは常套だと云えなくもないが、彼女の扱いの大きさや、最後まで良い仕事を残してくれたことも嬉しくなるし、清々しい気持ちになる。
ただし、さらりと簡潔かつ美しく描きすぎていて、ひっかかりが足りない映画であるとも感じる。南沙良の葛藤や恋心をもっと深堀りして描く選択もあったのではないだろうか。あるいは、出産に立ち合うシーンなんかも淡泊な描写に思える。
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