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[コメント] この世の果て、数多の終焉(2018/仏)

高温多湿の映画。それでいて体感温度は「冷たい」。
プロキオン14

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







インドシナとフランスの関係は、あまり日本人には馴染みが薄い。欧州の植民地化政策もあまり判っていないと、この映画の構図は頭に入ってこないかもしれない。ましてやそこに日本がどのように関わっていたか?いろいろ知らんかったわ〜。劇中にベトナムとフランスの立場は、いやというほど描かれる。

冒頭、1945年3月9日の「明号作戦」から始まるが、それまでは日本とフランスの協定により、ベトナムは軍事的には日本軍が支配し、政治的にはフランスが支配するという、「二重支配」が行われていた。'44年にシャルル・ドゴールがプラザヴィル会議で、植民地の自治拡大を約束したにもかかわらず、仏世論は植民地を手放したくないことから、日本軍が反発し、一斉に仏軍駐屯地を攻撃、兵士だけでなく女性や子供も殺された・・・というもの(映画HPやWikiから抜粋してます。そうじゃない語り口もあるかもしれません)

主人公ロベールは、その事件から生き残り、敵将ヴォー・ビンへの敵意を募らせるが、なかなか思うように進まない。その苛立ちはベトナムでの唯一の癒しだったマイとの関係にも顕れる。同時に映画を見る者にとっても、ロベールの行動が、目に余るようになってきた。もう「復讐」に囚われてしまった。

その挙句に、仲間のカヴァニャも失い、ロベールとベトミン兵だけになる。そして年は明け'46年、作家のサントンジュと、言葉を失ったマイが登場、そこにロベールはいない。

この世の果て、数多の終焉』という邦題、なかなか重いタイトルだ。そしてベトナムとフランスは「インドシナ戦争」に突入し、それは「冷戦の代理戦争」の様子を呈す。

映画としては「R+18」、ベッドシーンやヌードだけじゃなく、斬首、顔だけ剥がれる、バラバラにされた屍体に蛆がわく、戦闘シーンはほぼ白兵戦。爆弾も飛行機も登場しない。とても生々しい映画で、顔をそむけたくなる。

なかなかこういう映画に点数をつけるのは難しいが、ロベールじゃなく、カヴァニャとマイの方に感情移入をしてしまった。終盤のカヴァニャの「カミングアウト」があの場面で必要だったのか? 首をひねってしまった。

(評価:★3)

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