[コメント] とらんぷ譚(1936/仏)
上記は最たる部分だが、前半から、撮影準備段階で練られたアイデアであろうと思われるシーンばかりが目立つのだ。
IMDbでは、初めて画面外のナレーションが使われた映画とある。と云うよりも、回想シーンは、ほとんどの役者は科白の発声無しで、サッシャ・ギトリのナレーションだけで語っていく、今見ると、ギトリの活弁付無声映画、というべきパッケージだ。現在に至るまで、このような趣向で徹底した有声映画は他にないのではないだろうか。この趣向で奏功しているのは、矢張り前半部分で、ギトリの少年時代の、驚きの表情の反復等だろう。こゝは面白い。少年は、公証人の夫婦にM引き取られるが、夫人−ポーリーヌ・カルトンの怖さと、ギトリがボロクソにけなす独白のアイロニーにも笑わせられる。だが、中盤以降、この趣向の意味(効果)は薄れていく。
軍隊時代の酒場(兼売春宿)の場面では、女将のオバサンの、やけに長い歌唱シーンがあり、こゝだけは、登場人物の発声シーンだ。尚、女将には娘が二人おり、彼女らも客を取るのだが、決まって「今度はお母さんを指名してね」と云う、とのナレーションがある。
中盤以降、二人の女優が画面を盛り上げる。一人目は女詐欺師で、ギトリと恋に落ちるロジーヌ・ドレアン。二人で決行する宝石泥棒の手口は、本作後、いくつかの映画(ベッケルの『怪盗ルパン』等)で、ほとんどそのまゝ、なぞられている。もう一人は、モナコのカジノでいかさまルーレット(というか超能力ルーレット)を実行しようとして契約結婚するジャクリーヌ・ドリュバック。終盤近くになって、偶然、これら二人の女がルーレットで同席しており、ギトリと三人で食事をし、このあと、どちらと寝るか、というような選択を迫られる場面となる。こゝの見せ方も楽しいが、こういった女優たちの、声を聞くことができない、というのは、映画の快楽を一部棄損しているのではないか、という気にもなって来るのだ。
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