[コメント] 虹の谷(1957/日)
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この純朴な作品を『にっぽん昆虫記』を想起しながら観るのも一興であろう。
阿蘇・霧島山系の牛使い。牛山師と呼ばれている。業務は材木の運搬。ミャンマーでは象がやっている処だが、牛は象のように鼻で材木担げないから鞍から延ばした縄で曳かせている。巨大な樹木だと牛が何頭も連結される。初期の機関車みたいだ。労働歌が歌われる。人を殺めたら地獄谷へ連れていかれる。月田昌也が牛連れて放浪して、別の切り出しではすでにトロッコなど完備していて牛はいらないんだと就職を断られている。この頃すでにマイナー職業だったのだろう。
乱暴者の石黒達也は魅力的で、近所に住んでいる迷惑な乱暴者の見事な造形だった。こういう輩が伝統を振り回すとろくなことがない。恥かかしやがって、みたいな理屈が通る無頼の世界なのだ。月田の牛に転落させられたのにテツは生きていた、という展開も少年向け物語としてハラハラさせる。菅井一郎のベテラン牛飼いも含め、牛を育てるにあたって殴るか殴らないかという独特の教育の世界が垣間見えるのも興味深い。牛の黒目がちな目がアップに撮られ、月田はお仕置きできないのだった。これだけ可愛がった牛に名前とつけないのが気になる。
鉄砲堰開いて材木が雪崩れ流れて死にかける終盤の洪水責めは、残念ながら上手く撮れておらず迫力不足。菅井一郎のお爺さんが駆け付けるのは無茶で、石黒が簡単に反省するのもあり得ず、異様なラストになってしまい残念。本作は「虹の谷」では地味だと「怒号する牡牛」というタイトルで再封切されたらしい。
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