[コメント] 東京夜話(1961/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
そのパージされた外交官で没落貴族の芥川にしても、先祖の銀器を売って、これでもう売るものはない。外国人に高輪の邸宅貸して納屋に息子と住んでいる。
横丁のバーの美術がいい。区画整理で取り壊しの予定、銀座のバー買収の算段で、隣室に布団の見える座敷で淡島千景と議員の織田政雄との丁々発止。「君は初恋の人なんだ」「何度目の初恋?」。よくある喜劇だが面白い。
団令子は成り上がり志向のホステスの役を多くこなしたが、本作はとてもいい。中村伸郎の白髪爺さんとの関係がいい。「エネルギーが残っているんだよ」と自らのエロを嘆く伸郎。看病に家人の迷惑顧みず畳屋の二階へ押しかけ布団に潜り込む団。山崎努との絡みも納屋のカーテンから顔出すショットが素敵で、お惚気はロマンポルノを準備したようないい味がある。そしてこの窓が一転火事になる描写がまたもの凄い。
学生の山崎努は60年安保を横目で眺めたアプレで、保釈された友人の報告会を袖にして「他の世界では通用しないよ」。ここから反転して終盤、芥川の洋館の焼け跡に佇むのは、まるで戦後焼け跡を反復するかのようで、学生演劇っぽい。淡島・芥川も団・山崎も、しがらみのないゼロからの再出発を祝福している。東京映画100本記念作品に相応しい無理矢理感ということなんだろう。
フルオーケストラの劇伴が物語と不釣り合いで面白味があった。原作は「ひょっとこ」。高く銀座線が走る渋谷の現スクランブル交差点辺りが記録されている。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。