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[コメント] みをつくし料理帖(2020/日)

とても良い映画だと思います。私のコメントは、上げたり下げたり(誉めたり貶したり)がクセになってしまっていますが、本作は、下げから先に書きます。
ゑぎ

 まず、冒頭に、レトロなフィルムイメージ(左右にスプロケット穴がある)が出て、カウントダウンなんかするので、大林映画的な情報おもちゃ箱のような混沌を志向するのかと危惧したのだけど、そうでもなく、ただし、「つるし亀」とか「さがり眉」とか「亡八」とか「こぼれ梅」とかの、キャッチする画面やワード、あるいは、藤井隆をはじめとする極端に戯画化されたキャラ造型の容認には、矢張り詰め込み志向も感じる。特に藤井隆の演技には強い違和感を覚える。登場シーンでは、ワンシーンのコメディリリーフだろうと思ったが、ラストまで絡む重要な役なのだ。他にも、若村麻由美が登竜楼の調理場へ入って行き、くってかかるシーンも、やり過ぎの演出だ感じる。また、浪花も江戸も街の外観の美術が弱い。中でも、ワタクシ的には、吉原の引きの画がショボい点が、一番残念に思います。

 とは云え(こゝから上げますが)、浪花でも江戸でも、橋を使った演出がいいです。特に、冒頭、天神橋で二人の女の子が立って話をするカットを見た時点で私は涙があふれてしまった。実は、澪(松本穂香)と野江(奈緒)が心を通じ合う場面は、全編に亘って、涙腺を刺激し続けた。それは、プロットの力もあるけれど、美しい画面の力だと自分では思っている。例えば吉原のシーンでも、奈緒の部屋の美術は特筆に値する素晴らしさ。また、彼女への鷹揚な所作口調のディレクションも大きな効果を発揮していると思うのだ。また、物の交換の演出も、よく映画的な情感を盛り上げる。食材や料理は勿論のこと、木箱(弁当箱)、四文字しか書いていない手紙、小判、簪(かんざし)、貝合わせの貝(鳥の絵の貝殻)。そういった物の行き来の演出だ。そして、とてもさわやかなエンディング。藤井隆でさえ、さわやかな演技に見えて来る。とても良い映画だと思います。

(評価:★4)

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