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[コメント] ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ(2019/米)

二人の主人公と共に、もう一つの主人公の「家」がとても魅力的だ。
プロキオン14

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







二人の主人公、ジミーとモント。黒人青年のふたりは、いわゆる「ニガー的」な人たちと違って、とても穏やかだ。ジミーには、子供のころに過ごした思い出の「家」が心のよりどころであり、誇りでもある。演劇好きのモントは、穏やかに寄り添い、ジミーを支える。

この家のあるサンフランシスコのフィルモア地区は、かつて「日系人」が住んでいた地域で、第二次世界大戦により、日系人たちは収容所に送られ、その空いた屋敷に黒人たちが移り住むようになった。やがて黒人たちも立ち退き、いまは裕福な白人層が住む地域となり、その美しい様式美は、観光名所になっている。この「日系人」の歴史は、私たちの遠い先輩たちが経験した、悲しい歴史のひとつである。だから、ジミーたちと同様に、日系人たちがこの家に思いを寄せても不思議じゃない。

ジミー・フェイルズを演じるのはジミー・フェイルズ本人。監督と幼馴染だそうで、実際にジミーは、子供時代をこの地域で過ごしたそうで、そういった想いと、変わりゆくサンフランシスコを描きたかったそうだ。男前で、マッチョなジミーは、この映画を支える主人公としてスクリーンに映える。そして友人のモントは、本当に穏やかな笑顔が魅力的だ。

そして語られる、この「家」の真実。えっ、そうなの?と面食らった。思わせぶりに登場して消えたジニーの「母」が、「じゃあ、私がこの家を買ったげるわ」的な登場をするかと思ったが、それもなかった。ある意味、ジミーをこの地に縛る「鎖」だったこの家。そこから解き放たれたジミーがとても清々しかった。

ムーンライト』などと同じ「プランB」と「A24」の共同制作だが、「賞狙い」的な黒人をテーマにした映画とは一線を引いた、美しい映画でした。

(評価:★4)

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