[コメント] ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ(2019/米)
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二人の主人公、ジミーとモント。黒人青年のふたりは、いわゆる「ニガー的」な人たちと違って、とても穏やかだ。ジミーには、子供のころに過ごした思い出の「家」が心のよりどころであり、誇りでもある。演劇好きのモントは、穏やかに寄り添い、ジミーを支える。
この家のあるサンフランシスコのフィルモア地区は、かつて「日系人」が住んでいた地域で、第二次世界大戦により、日系人たちは収容所に送られ、その空いた屋敷に黒人たちが移り住むようになった。やがて黒人たちも立ち退き、いまは裕福な白人層が住む地域となり、その美しい様式美は、観光名所になっている。この「日系人」の歴史は、私たちの遠い先輩たちが経験した、悲しい歴史のひとつである。だから、ジミーたちと同様に、日系人たちがこの家に思いを寄せても不思議じゃない。
ジミー・フェイルズを演じるのはジミー・フェイルズ本人。監督と幼馴染だそうで、実際にジミーは、子供時代をこの地域で過ごしたそうで、そういった想いと、変わりゆくサンフランシスコを描きたかったそうだ。男前で、マッチョなジミーは、この映画を支える主人公としてスクリーンに映える。そして友人のモントは、本当に穏やかな笑顔が魅力的だ。
そして語られる、この「家」の真実。えっ、そうなの?と面食らった。思わせぶりに登場して消えたジニーの「母」が、「じゃあ、私がこの家を買ったげるわ」的な登場をするかと思ったが、それもなかった。ある意味、ジミーをこの地に縛る「鎖」だったこの家。そこから解き放たれたジミーがとても清々しかった。
『ムーンライト』などと同じ「プランB」と「A24」の共同制作だが、「賞狙い」的な黒人をテーマにした映画とは一線を引いた、美しい映画でした。
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