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[コメント] ある夏の記録(1960/仏)

キャメラの軽量化が可能にした自由なインタヴュー形式を最初に謳歌した作品、ということなんだろう。大した成果はない。冒頭に「シネマ・ヴァリテの実験」などと述べられるが、云いっ放しで突き詰められはしない。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ボブ・ディラン似のマルセリーヌ・ロリダン・イヴェンスは主役で、冒頭からインタヴューを請け負い、ユダヤ人収容所の体験をコンコルド広場で独白する(ここだけが上手く撮れ過ぎているように見える)。 「幸せですか」のインタヴュー、街頭での聞きっぱなしの冒頭が面白い「勝手だろ」「お金の問題よ」「普通は(不幸と)両方あるでしょ」等々。

「労働者は仕事が細分化されていて達成感がない」と述べるランドリという名のアフリカ男性を工場に追いかけ、サントロペの避暑に追う。彼の見解は、ブルジョア夫婦の亭主と合致している。「我々の時代の悲劇は仕事が選べないことだ、無意味な仕事をしなければならないことだ、みんな午後6時までは囚人なのだ」。この意見の一致を映画はもっと追いかけてほしかったが、そうはならない。主題の収斂を否定するかのようだ。

ディスカッションになり、進行中のアルジェリア戦争が取り上げられ、誰かの発言に監督は「芸術至上主義だ」と批難している断片があり、これがひどく新鮮だった。芸術至上主義でヌーヴェル・ヴァーグを輸入した本邦の言説空間もここで批難されているだろう。この視点はゴダールも共有したはずだと思う。

最後はみんなでラッシュフィルム観て、人工的だと批判も出るが、監督はこれでいいのだと弁護して映画は終わる。なんと、ラッシュで終わるのだ。この未完成を実験的だと称揚するべきなのか、よく判らない。

(評価:★3)

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