[コメント] 女たち(1939/米)
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女性しか登場しない映画は本作より本邦の『鏡山競艶録』(38)のほうが早い。早ければ偉い訳ではないが。本作には女性が135人登場、パートカラーのファッションショー付。
ロザリンド・ラッセルのコメディは『ヒズ・ガール・フライディー』(40)の前哨戦。ヘンな被り物が素敵だ。香水の売り子ジョーン・クロフォードに(ノーマ・シアラーの亭主との浮気を聞きこんで)絡んで籠に転落するアクションも、シアラーを挑発するときの三面鏡も、田舎でのポーレット・ゴダードとの喧嘩も素晴らしい。この農家のマージョリー・メインの毒舌婆さんもいい。「離婚決定だって」「誰が云ったの」「貴女でしょ」みたいなノリが延々続く。
ノーマ・シアラーのメロドラマは詰まらない。ジョーン・クロフォードと浮気した夫と離婚して、それから奪い返す結末。夫が登場しないためどんな人物だか判らず、彼女らはセレブの地位を奪い合っているようにしか見えない。これは女優だけシバリというこの企画の欠陥だっただろう。娘のヴァージニア・ワイドラーは上手過ぎて嫌味に流れている。「大人の愛は終わるのよ」「お母様への愛は終わらないわよ」みたいな。
シアラーへの母ルシル・ワトソンの教訓話は面白かった。亭主の浮気は恵まれた女が味わう唯一の不幸であること。知らないふりをしなさい、私もそう母に教わった。もうひとつ、女友達は信用するな(喜劇全体が批評されている)。浮気を天然痘に喩える件もあった。もし夫が天然痘に罹ったら看病するでしょ、浮気も同じ、と。
これらは「アメリカ資本主義の倫理」とでも名付けたいような処世だ。クロフォード最後の「これで売り子に逆戻りか」という詠嘆もそうだ。泥風呂まであるビューティサロン、ネイルの流行、お喋りなネイリストデニー・ムーア、8ミリ撮影(自転車小屋の将棋倒し)、この映写用の持ち運び用スクリーンは現在でも使う種類のもの。どんだけ景気が良かったのだろう。ニューディール政策で景気は回復していたのか一部だけのことか。39年は第二次大戦開戦の年。
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