[コメント] 大阪の女(1958/日)
開巻は通天閣か?街を見渡せるエレベータの上昇移動。続いて、長屋の2階を右から左へ横移動して見せる。長屋の端まで行くと、1階に降りて、左から右へ横移動する。クレーン撮影か。このカットの中で、住人を見せるのだ。横丁のクレーン撮影は、この後、何度も出て来る。全編、いわゆる大阪、新世界が舞台となる(ジャンジャン横丁など)。
主役の京マチ子と父親の中村鴈治郎は、芦乃家雁玉と賀原夏子の家の2階に間借りして住んでいる。鴈治郎は引退した人気漫才師。京は後家で、死んだ夫は、楽士だった。長屋の隣人では、角梨枝子の造型も秀逸だ。本作では横臥して登場する。身持ちの悪い年増役で、役作りなのだろう、いつもより太っている。角の妹は小野道子。トルコ風呂に勤めている、しっかり者。母親は小夜福子。兄は高松英郎で幼馴染でもある京マチ子に気がある。が、京は、鴈治郎の計らいで、芸人の船越英二に引き合わされる。京が、亡き夫の形見であるクラリネットを船越の前で吹き始める。このあたりの演出もいい調子なのだ。
あと、丹阿弥谷津子が、フォックスという仇名の女詐欺師として出て来るのだが、品のない笑い顔がいいディレクション。また、終盤になって、倉田マユミが投入されるのも非常に効果的なのだ。この人らしい、がめつさが良く出ている。
演出や技術陣の見せ場ということでは、おでん屋からの火事の場面もシビれる。消防車の鐘のカット挿入のセンス。狭い通りでの消防車からの噴水カットも見事な造型だ。そして、終盤の小屋を借り切っての演芸シーンでは、客席の上を矢張りクレーン撮影だと思うが、後退移動で見せるカットを反復するのだ。舞台上の芸人のフルショットから、奥の観客まで後退して見せる。ただ、この舞台の場面と、通りでクラリネットを吹き、宣伝する京マチ子を執拗にクロスカッティングする繋ぎは少々冗長か。執拗に挿入され過ぎるので、なんかドンデン返しがあるのかと思ってしまった。
#備忘でその他配役を記述。
・まずは、ラストの演芸場での演者を記載しておこう。()内は映画中の名前。かしまし娘(かしまし三人娘)。松鶴屋光晴、浮世亭夢若(秋月春月)。暁伸とミスハワイ(菊太郎みるめ)。
・芸人たちのリーダーで山茶花究。その他芸人役では中村是好、平和ラッパら。他にも上方芸人が多数顔を見せているはずだが、私は判別できなかった。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。