[コメント] 摩天楼の男(1960/日)
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キメのシーンでアクションを静止させ、次の件のカットは激しいアクションから入る、という編集が繰り返される。これが清順のジャンプカットを彷彿とさせる。するとこれはどこまでが清順調なのか、それとも日活の手法だったのか。ともかく格好いい。さすが『拳銃は俺のパスポート』の監督らしい。工員が娯楽室で喧嘩して、するとテレビに手がふれて、画面に女たちのダンスが映されてみんなが見入って喧嘩が終わる、という件がやけに印象的。
物語は「オール読物」系。雷神ダム建設、三浦建設が本体工事、荒川組が付帯設備工事、次の工事の落札には成績が反映されるため、荒川組は三浦建設の成績下げようと画策。現場監督は三人が事故死して四人目が三四郎。「殴られても返すな」と労働者を諭し続けるが、潜入者がサボったり乱暴したり。この暴力と放火に「危なくてやってられねえ」とついにもっともな怒りを抱いた三浦建設の労働者たちはダンプ三台で押しかける。
この大群を制して二谷曰く「法律が奴等を裁いてくれる。我々の勝負は我々の仕事なんだ。この谷に摩天楼を建てよう」で♪ダムの男の、と歌が入って終わる。これはもう、60年の安保闘争への露骨な批判だろう。労働者は政治などせずに労働だけしていろと云っているのだった。
最後は、ソファーをへし折り「どんな社会にも住めないキチガイ」とボスから放送禁止用語で評価されたユセフ・トルコとの一騎打ちを簡単に制した二谷が、次の現場に清水を誘うハッピーエンドなのだが、二谷に懸想していた吉行和子が収束にいなくなるのは彼女が可哀想な気がした。丹波哲郎がノサれっぱなしなのも尻切れトンボの印象。
現場は木曽町の牧尾ダム建設現場と日活HPにある。土工たちの木造の住まいが舞台になっていてリアル、これも現場のものなんだろう(燃やされるのは調布の河川敷のセットの模様)。モノワイド。
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