[コメント] カモ(1949/米)
しかし、彼には自分の嫌疑(したこと)の記憶がない(ブラックアウト、という言葉が使われる)。ウィリアムズが記憶を取り戻し、汚名を晴らすまでを描いた映画。
病院から脱走したウィリアムズは、戦友のアパートを訪ねる。その妻がバーバラ・ヘイル。しかし、戦友は既に亡くなっており、ヘイルは、夫の死の原因がウィリアムズにあると思い込んでいる。ヘイルの部屋での男女の格闘シーンが、いい演出だ。ヘイルの暴れ方がいいし、手を噛むカットも迫力がある。
ウィリアムズは仕方なくヘイルを脅し、彼女の車で一緒に逃走するのだが、ハイウェイで、明らかに警察ではない男たちに追跡され、命を狙われる。ヘイルは、自分も殺されかけたことで、ウィリアムズの云うことを信じるようになる。体調を壊したウィリアムズを治療するために、浜辺のキャンピングカーで一週間過ごす場面では、『地上より永遠に』のラブシーンを思わせるような演出もある(とは云え、二人は恋に落ちた、というワケではないが)。
クライマックスは、LAの中華街での、悪漢たちとのチェイスシーンで、こゝは空間描写が的確で、よく撮れいている。ウィリアムズが、逃げるために入ったアパートには、日系二世部隊の兵士の未亡人(アジア系の女性)がおり、彼を匿ってくれる、という場面も重要だろう。一方で、ウィリアムズの軍法会議の容疑の理由として、戦時中のルソン島、カバナチュアン捕虜収容所での、日本軍による捕虜拷問行為が描かれており、日系二世部隊の存在も挿入することで、バランスをとる意図があったのだと思われる。
映画全体の出来という意味では、ちょっと荒っぽい出来という感想を持つ。特に、敵がヘイルの車を追ってくるロジックを、観客には見せている状況なのに、ウィリアムズもヘイルも全然、なぜ車が狙われたのか、気づかない(考えもしない)、という点はずっと引っかかってしまった。また、ラストの列車のシーケンスは、簡潔だが呆気ない。もうちょっとアクションシーンがあればと思う。
#備忘でその他配役等を記述。
ウィリアムズのもう一人の友人役で、リチャード・クワインが出て来る。後に『殺人者はバッヂをつけていた』などの監督になる。拷問した日本兵ケン・トコヤマ(トキヤマに聞える)は、リチャード・ルー。ちなみに、ウィリアムズとヘイルは実生活では夫婦。2人の子供は、後にサンダンス・キッドを演じるウィリアム・カットだ。
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