[コメント] 罠を仕掛けろ(1949/米)
1947年のアンソニー・マン『Tメン』の姉妹編のような作品。本作も、最初に米国財務省の実録風紹介コーナーがある。『Tメン』に比べると、全体に、いびつな出来具合だと思うが、そこがフライシャーらしいし、部分部分の奇形的な突出が、魅力と感じられる映画ファンもいるだろう。
前半というか、終盤近くまで、贋札偽造犯のロイド・ブリッジスがほとんど主人公だ。財務省の役人や警官も度々出て来るが、主役というべき動きはしない。また、ヒロイン、という言葉が相応しいか疑問だが、LAのナイトクラブの煙草売り、バーバラ・ペイトンがブリッジスの女。LAに出て来たブリッジスが、いきなりペイトンを暗闇に引っ張り込み、キスする場面がしびれる演出。あるいはブリッジスが、酒浸りの元相棒、ダグラス・スペンサーを責める場面の仰角構図。ブリッジスの悪役ぶりもいいのだ。
中盤になって、ペイトンの部屋は盗聴器が仕掛けられるのだが、盗聴シーンは、彼女が好き、という設定のラテン音楽がずっと鳴り続けている(冒頭タイトルバックでも流れている音楽)。これによる焦燥感醸成もゾクゾクさせる演出だ。あと、2万5千ドルの現金と25万ドルの贋札との交換取引の現場となる、ハリウッドの通りの場面も忘れがたい。2台の自動車の動きと、変装して監視する役人たち。
終盤になると、元シークレット・サービスで、ナイトクラブの金持ちの客に成りすましていた潜入捜査官、ジョン・ホイトにいきなり焦点が当たり出し、主人公がブリッジスから交替する。終盤でブリッジスの出番が無くなるのは、いびつな構成だと思う。せっかく、良い悪役ぶりだったのに。
ラストのクライマックスは、贋札偽造犯たちのアジトに近いケーブルカーの車両基地での銃撃戦だ。敵のボスの顛末の演出も見事だが、なによりも、バーバラ・ペイトンを放りっぱなしにする冷徹さが、突出していると思う。
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