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[コメント] 小さな冒険旅行(1963/日)

ちょっと面白い大人向け読み切り短編漫画の趣。軽い風刺タッチで、どのテーマも深掘りされないのがオーシマらしくない。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







見かけた10円玉が気になって、越えてはならぬ黄色い線を越えて10円玉拾って始まる少年の冒険旅行。子供の独立は金銭から始まるという視点がある。その通りだと思う。満員電車は三ノ輪車庫へ、遊園地でパン貰い、少年はその金を何度か使おうとする。電車では受け取られず、アイスクリームの売店では足らなくて手を振られる。パンを分けてもらい、他の少年にも分ける。

この金銭への拘りで一篇つくられるのかと期待したが、それほどの徹底性はない。女子工員の慰安旅行のバスで人気者になり、見つけた小松方正に浅草で降ろされる。靴磨きの老人たち、武士の格好した「無敵一刀流」は誰だっただろう。

小山明子追いかける戸浦六宏のドタバタなどあり、戸浦少年をわが子と擬装して難をのがれ、少年は戸浦に金貰って屋台でおでん喰らい、適当にタクシーに乗る。外国の子供たちとのフェンス越しのやり取りがあり、火事の放水を眺め、砂場の女の子と戯れる。

道路は自動車が爆走し、工事の槌音と混じって騒音が激しい。地下鉄の工事なのか、意外と風景に魅力のない作品だがここは記憶に残る。少年は少年らしく無鉄砲に地下を進む。助けられてヘルメットつけてもらい、たくさん穴の開いた床から下を覗く。床をヘルメットが這い、ザリガニやカエルが進み、少年は泣く。そして進み、地下かと思っていたら上の方から地上に降りる。この描写が面白い。

路面電車に乗って帰り、車掌は件の10円を受け取る。夕暮れ時、不思議と心配していなかった母親にアパート前で迎えられる。この母親はコメディであると同時に大島的人物だろう。

大島の常連がところどころに登場。電車車掌の米倉は本作だけだったか。左卜全は公園で銀杏の樹を揺らして落葉を愉しんでいる。会話はなくキメの物音以外は劇伴が流れ続けるサウンド版映画。マゼンダだけが抜けた不思議なフィルムで鑑賞。消防車は青かった。

(評価:★3)

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