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[コメント] 親不孝通り(1958/日)

何でアメリカ人相手なのか判らなかったが、賭けするボーリング場が面白い。流行が始まっていたのだろう。自動ピン立てマシンもすでにある。60年代になり映画が不況になると、映画館は多くがボーリング場に改装されるのだが、50年代の映画館はこれをまだ知らない。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







姉の桂木洋子を堕胎させた船越英二への復讐に、川口浩は船越の妹野添ひとみに接近し妊娠させる。桂木はまだ結婚していないからと船越の子供をさっさと堕してしまう。船越は「別に捨てやしないさ。結婚しないだけさ」と桂木に云っている。一方、川口は野添を山小屋付近の薄に付き倒して強姦する。前者は和姦で後者は強姦、後者だけが犯罪なのだが、他方、子供ができて面倒見ないという船越のような男は犯罪者ではないのか、という疑問は確かに湧くものがある。法理的にはどういう道筋を辿ったのだろう。

しかしまあ、強姦した時点で川口はアウトだと思うのだが、この時代の不思議さで、野添は川口と付き合い始めるのだった。最近思うのだが、始めての男性と結婚、という道徳的なシバリが強すぎた結果、こういうことが起こったのではないか。これは処女性重視の被害例のひとつではなかったのだろうか。21世紀に処女を奪った強姦者と結婚したがる女などいないだろう。野添は薄の強姦現場に川口を引っ張って行って突き倒したりする。

船越のギャフンはどんなだろうという予感が物語を引っ張るので飽きはしないし、実施、野添の紹介で川口が船越に再会する件は盛り上がる。「俺はただこいつ(船越)の真似をしただけなんだ」と、恋愛感情など全くなしに云い放つ川口の復讐劇成功は推理小説系の感慨がある。それだけに、野添が「貴方の子を産むつもりよ」と云い残して旅立ち、桂木が船越と寄り戻す収束は混乱していてよく判らないが、別に満足の行くものではなかった。

駄目学生の川口浩たちの描写はマスムラらしい。警職法反対デモしている学生を横目に「彼等も将来は社会党」とシラケている描写はマスムラは他でもやっていた記憶。面接に行っても新採見送りになったと面接自体が中止になるという凄い件が序盤にある。不況だったらしい。「日本経済は駄目だ、アメリカに行って皿洗いでもするか」という科白もある。フニクニフニクラが唄われる女学生の登山では、山小屋で「大学への女子への求職はゼロ」「結婚するしかない」と会話が交わされている。「自民党か社会党か、闘争の時代だ」と息巻く学生を今のうちだけさとシラケていた川口は小さなタクシー会社に職を得る。

私的ベストショットは船越と野添が逢う野外の駐車場で、普通のビルの谷間なのだがやけに広く、とても特殊な空間のように撮れている。野添がインスタントコーヒー自分で淹れる件では粉がカップ半分も入ってしまっており、普通はNGだろう。最後に「親不孝通り」の解説を押し込むのはいかにも下手糞だし、主役たちに親はいないのだから何でこの題なのかも判らない。

(評価:★3)

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