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[コメント] ブラックバード 家族が家族であるうちに(2019/米=英)

海辺。朝焼けの雲。朝焼けのカットは全編で3回ある。つまり三日間のお話だ。舞台は海辺の一軒家。出演者は8人のみ。一軒家の主はサム・ニールスーザン・サランドンの夫婦。こゝに、二人の娘家族や友人を迎え入れた、サランドンのお別れの会が描かれる。
ゑぎ

 上の娘はケイト・ウィンスレット。厳格さ、融通のきかなさを見事に表出する。彼女は夫と息子のジョナサンを連れて来る。下の娘はミア・ワシコウスカで、こちらも情緒不安定ぶりの表現が絶妙だ。彼女はレズビアン。クリスというパートナーと一緒に来る。ウィンスレットとワシコウスカの過去からの確執の描き方、いつ爆発するか分からないスリリングさも見どころだ。そして、サランドンの大親友はリンゼイ・ダンカン

 回想シーン、フラッシュバックを一切使わず、科白のやりとりだけで(勿論、物の受け渡しなど所作の演出含めてだが)、登場人物の過去のエピソードや、将来の夢、死への恐れなどが語られるのも、この映画の厳粛な美しさにくみしているだろう。例えば、皆で海辺へ散歩に出た場面で、サランドンとニールが、ウィンスレットの宿った場所、状況を話すシーンの美しさ。私はこのシーンが一番好きだ。ちょっと演劇的な作劇臭さも感じられるが、このような小さなプロットを積み上げ、感動につなげる力は大したものだと思う。

 というワケで、感動するシーンも多いのだが、特に終盤は、サランドンの決意を覆すことができるかどうか、という、クライマックスを用意するため、作劇が過度になったキライがある。逆に、作り過ぎの平板さと云ってもいい。これにより、興奮がちょっと覚めてしまった。尚、訪問者たちが邸から車で出発するのを、静かに繋ぐ演出はいい。

(評価:★3)

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