[コメント] 月給一三、〇〇〇円(1958/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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サラリーマンもので、本筋は不正輸入で警察沙汰で馘になる西村晃たちの前半と、入試試験結果を知って石浜朗に合格と連絡したら結果の差し替えがあり、人事課の南原伸二が左遷させられる後半から成る。後半はまあ、公式発表前に電話してしまう南原が組織人としては迂闊としか云いようがないのだが、社の機密なのにとさんざ叱られているから、かえって人事の不正が浮かび上がり、「正義の問題は別問題」と居直る課長の宮口精二の奇怪な人物像が浮かび上がってくるのが巧みなつくりだった。ただ、前後半どちらもアリがちなネタではあった。
面白いのはサラリーマンの生態の描写で、将棋に熱中するあまり恋人にも邪見になる田村高廣がいい。私も勤め人時代は昼休みに将棋していたが、すると将棋しない人たちは人間に見えなったものだった。あれは不思議なものである。
人事の件も面白い。西村晃が馘になって後任は誰だ、みんな浮足立ち仕事は手につかず、おれが課長かと三井弘次まで浮かれ出し、宮口昇進の噂で部下たちは宮口邸に押しかけてどんちゃん騒ぎ、翌日昇進なしと判明してシラケる社内。
三井弘次の酔っ払い芸は完成の域。なんて巧みな千鳥足だろう。美人社員がソロバン使う周囲をニヤケながらうろつき回る会計課長の西村晃がまた上手い。こういう下心しかない上司は世の中どこにでもいるのだろうと思わされた。
南原(九州出身の設定)が褌を売っている店を探して「越中ありませんか」と訊ねている(そこは杉田弘子の家だったというギャグ)のが時代を記録して貴重だろう。「田舎っぺ大将」の頃はもう誰も褌などしなかったに違いない。杉田はここではイマイチ魅力なく残念。モノワイド。
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