[コメント] 若き魂の記録 七つボタン(1955/日)
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長門裕之を慰問にきた父の加東大介が俺にも召集が来たと漏らすのに驚きがあった。しかも加東は戦死の報が齎されている。市村博のナイフ使いは感化院への偏見だと思うが、予科練でこれをやっちゃうという組合せが絶妙。天長節の演芸会が面白い。化け猫になってマイクを齧る芸はいったい何なのだろう。官品持ち出しというセコい違反を上層部が問題化して、練習生が全員バットで尻叩かれている。市村は中盤病床について簡単に亡くなってしまう。海岸で屯していたら、戦中とは思われない太股出した女たちが自転車で「七つボタン」歌いながら手を振って通過するという断片は何だったのだろう。
モールス信号の打電競争(通信打信競技とある)は、見たことのないモールスの機材が登場して稀少。負けちゃって脱走する長門。特攻隊志願者に向かって「死なないで」と過激なこという芦川が素晴らしい。三國が長門を待っているほんの小さな海軍橋の佇まいがいい。軍側はレンガ倉庫、反対側は板塀の並ぶ官舎。この懐かしいような風景、ロケ地はどこなのだろう。訓練をしていないお前たちを特攻機に乗せる訳にいかないと志願者募集、全員が応募する。どうやら魚雷艇の乗船らしい。映画のラストは8月15日(水)。いろんなもの燃やして解散、ラストは希望に満ち溢れているが、いろいろ駆け足でよく消化されないまま終わって残念。
三國はさすがで、突然に怒りを噴出させる予想のつかない危険な造形。安部徹との対抗関係が愉しい。芦川の写真破いて火にくべてしまうのはアクマかと思わせられる。後に芦川と三國は眼を合わせて三國が目線を避けるのだった。このふたりとも足が悪いという相似形。空襲のなか足の悪い三國が逃げ回るショットがサイレント調にもの凄い。三國の保育所で。唱歌「故郷」をオルガンで弾いていていたアラタマへの思慕はいかにもとってつけたようであった。
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