[コメント] ちんじゃらじゃら物語(1962/日)
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名古屋のパチンコ事情に特化した話かと期待したのだがそうでもなかった。私の観たフィルムは「喜劇 出たとこ勝負」がタイトルで下に小さく「「ちんじゃらじゃら物語」より」と入る。パチンコがメインの映画企画ではなかったのかも知れない。戦時中の演芸部隊とかオートレース(鈴鹿がクライマックスの舞台)とか、話はいろいろ渡り歩く。
名古屋ロケが殆どないのも残念。OPに空撮があるだけで、あとはパチンコ屋のネオンを幾つも連ねて映すぐらいのこと。パチンコ屋のセットもそれほど穿っていない。劇中「駅裏のゴミゴミした所は名古屋の恥」と再開発を画策する須賀不二男たちは語り、千秋実は市長立候補者に担がれて、釘師で再開発反対の旧友伴淳と対立する。当時のその、名古屋の恥の駅裏が観たかった。
伴淳の釘師振りの描写は細かくていい。夜中に金槌で釘直し、パチンコは貧乏人の趣味、業者もお客も儲けさせねばならないと矜持を語る。白眉は伴淳とパチプロフランキー堺の対決。磁石で詐欺する三木のり平の件も面白い。子供に落ちた球拾わせていたのり平に伴淳は同情して釘を加減してやったのだが、のり平は裏口で子供に駄賃渡して外車で去るのだった。こういう小ネタで全編埋めて、パチンコ風俗を描き切った名作にしてほしかったものだった。
韓国人焼き肉屋の山茶花究の伴淳との関係は『糞尿譚』の続きに見える。芦屋小雁歓迎の宴会でチマチョゴリのお姐さんがダンスしている。しかしパチンコ屋の経営とコリアンという話にはならなかった。ここの処ももっと事情を穿った逸話がほしかった。
黒柳徹子は早口秘書というらしい役柄。芦屋小雁が、千秋が関係したカンボジア人との子供で、選挙出馬中につき同じ山田姓の伴淳の子供ということにして応対、という後半のドタバタ劇はさらに緩い。千秋が小雁の母であるカンボジア妻に何も関心を示さないのは冷淡な印象を残す。これは脚本か編集の手落ちだろう。
不思議と名古屋弁は仲居の宮城まり子だけが喋る。主題歌はクレイジーキャッツで ♪この味知らなきゃ生まれた甲斐がない とギャンブル中毒を歌い上げている。ベストショットはオートレースのクライマックス、観戦する有島一郎の握ったパイプが力入れ過ぎて抜けた瞬間に小雁がレースを逆転するショット。
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