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[コメント] 宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 前章ーTAKE OFFー(2021/日)

おそらくは「艦隊戦の醍醐味」や「群像劇の楽しさ」を無視してファンに見限られた「2202」の独りよがりさを反省したのか、「2199」のわくわく感を少しずつ取り戻してきていたのは好印象。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







実際この『新たなる旅立ち』(テレビ版『ヤマト4』の要素も含めて)は旧作の希望を踏みにじるような事件が続出し、自分としては観るのが惰性になりはじめた作品だったこともあり期待は薄かったのだが、今回は『2199』の良さをスタッフが見直しつつ、旧作の判りやすさも加えようとしているのが見てとれ、なかなかに観られる内容になっていた。

旧「新たなる旅立ち」で失望を受けたのがガミラス星の崩壊であり、イスカンダル星の暴走である。SF考証の面でも心情的にも許せなかったファクトだが、今作では暴君から心を改めたデスラーが民主政府の宰相となったヒスと連携し、もともと崩壊の日の近いガミラスの国民の移住できる星を総統自ら探していた、という前提があり、方法論としては好戦的ながら信頼を取り戻したデスラーの仕事ぶりは、充分その存在を肯定できるものにしている。それゆえ多くの好キャラを生んだガミラスの最期は、今回はお役御免の「最後の花道」めいた扱いからは離れていた。またイスカンダルの惨劇はもっともな異星文明の手になる超科学の説明がついている。

そして今回はアクティブに動く新入りクルーの行動もよく描かれ、同時に「2199」で生まれたキャラへのスポットライトも好意的だった。藪の生きる目的が見い出されるシークェンスなどはその最たるものだ。福井晴敏が嫌ったという女性乗組員にも、私情を越えて書き込みがなされている。

これでこそ今のヤマトだ、と思えるのはそういったエピソードに挟まれた古代やデスラーの存在意義を示す行動と言動からだ。ふたりが英雄視される理由が旧作には不足気味だったが、かれらを人をまとめる指導者として描くのには成功点をあげていい。かれらは体の大きな子供ではなくなっている。これならあのうざったい「好敵手デスラー」なれども許せるものと認めていい。

自分もジジイになってきたので、問題作に「ツッコミどころ満載!」とばかりに揚げ足をとりまくる酷評をぶつのには疲れてきている。意外な映画のガンバリには拍手くらい贈ってやりたい。

(評価:★4)

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