[コメント] 妖雲渦巻く(1923/米)
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「蓮とケシの国、上海」と字幕で紹介され、上海租界、カフェ・ド・パリの汚い横丁、何でも金次第、麻雀に阿片女王、阿片吸っている白塗りで肌ボロボロ奴に「中国にハマったようね」、。「競馬で買ってアメリカに帰ろう」。杭州の村で宣教師は野外教室開いて後進国への教育に勤しむ。ここまではまあ昔の国際人権感覚もろ出しだがありがち。
しかし鉱山の奥に住む鐡済族というのが阿片を栽培していて、ケシ畑でベトナム人みたいな笠かぶって太鼓叩くに至っては無茶である。常識ではイギリスが三角貿易でもってインドで製造した阿片を清に輸出して稼いでいたのであり、中国本土で少数民族がが阿片を製造していたなんて話は初耳だ。映画の出鱈目な設定なのか、いや一部の阿片は生産していたのか、不勉強にして知らないが、それでも、あたかも中国産が一般的なような物語を仕組んで「中国にハマったようね」ではひどい。
松明もった少数民族と銃撃する米麻薬取締官たちという初めから勝負の見えている対決、麻薬取締官と阿片の女王との恋、等々と無茶苦茶は加速する。演出は対話ばかりで退屈な時間帯が多い。最後は杭州は阿片の悪から解放されたといい加減に総括される。
当時はヴェルサイユ=ワシントン体制で軍縮の一方、英仏米日で中国の権益争いの時代。アメリカは門戸開放と主権尊重を主張(日本を牽制)しつつ、第一次大戦で疲弊した英仏の利権横取りを画策していた(『満州事変から日中戦争へ』加藤陽子)。本作はそんな時代の正義のアメリカを描いて阿呆らしい。
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