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[コメント] 愛のまなざしを(2020/日)

開巻は色鮮やかな抽象画。赤青白が目立つ。絵柄は大きな四角から小さな四角。フレームの寓意か?なんて思わせる。この絵はクリニックの診察室に飾られている。次に地下道のカット。黄色が目立つ(点字ブロック?)。
ゑぎ

 こゝはどこにあるのだろう。仲村トオル杉野希妃が住むマンションの近くなのだろうか。この地下道は、仲村の息子−藤原大祐が食事に招かれた帰りのシーンでも出て来、ラストでも舞台となる重要な場所なのだ。

 人のいない地下道。公園。夜中に勝手に中へ入れるクリニック。子供部屋にも抽象画が2枚。あるいは、杉野の実家は、玄関ドアの真ん前に白いメッシュフェンスがあり、来訪者を完全に拒んでいる。とても違和感がある。ほとんどのシーンが非現実的だと思える。この一貫性が見る者を不安におとしいれる。また、そういう意味では、杉野の衣装の効果も特筆すべきだろう。この人をクリニックに受け入れる仲村の精神に違和感を感じずにはいられないではないか(もっとも、もう冒頭から仲村の精神の破綻は描かれているが)。

 確かに、斎藤工がもっとかき回してくれるのかと期待していたのに終盤になって腰砕けだし、杉野も、いまいち怖さが足りない。なんか、もうひと暴れ欲しかったなぁという感想が偽らざるところだが、しかし、それでも私には、ゆったりとした前進移動での寄りと、アクション繋ぎ/ポン寄り/ポン引きのカッティングは、全編に亘って見応えがあった。また、音の演出で云うと、仲村が薬を飲むシーンの効果音が顕著だが、これも丁寧な仕事だ。画面造り、音作りの面でのスリルの醸成を楽しむ分には、とても面白い映画だ。凄い傑作、とまでは云わないが、ハードルの上がった私の期待に十分に応えてくれたと思う。

(評価:★4)

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