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[コメント] 欲(1958/日)

舞台は明らかに出雲だが(ロケ地は異なるかも知れないが)、劇中では「八雲市」と改変されている。神社の屋根をパンニング。結婚式出席者が列になって歩くのを、横移動でとらえた良いカット。スコープサイズを強烈に意識させる。
ゑぎ

 この冒頭で、石井富子が、猫のタンクを取られた、とかなんとか喋るシーンがあり、タンクって何のこと?と思ったが、じきに分る。劇中、睾丸のことをタンク、ないしは、ホルモンタンクと呼ぶことで統一されている。

 主人公は伴淳三郎で医師。不老不死の薬を研究している。薬はホルモンタンクから製造できるのだ。完成の暁には、戦争もなくなり、世界平和が実現できると真剣に考えている。タンクの調達を手伝っているのが三國連太郎で、近くの写真屋だが、薬が完成したら、販売権を一手に握ろうという欲がある。三國は、この町に新たに赴任した新聞記者−渡辺文雄と知り合ったことで、この薬の研究について、新聞記事に取り上げてもらうのだが、記事を見て、詐欺師の森繁久彌がやって来る、という展開だ。渡辺文雄は、もう一人の主人公と云って良い動きをする。また、森繁の登場は、屋内ドリーの前進移動カットで、これには特別感がある。森繁は、三國とその妻−水原真知子を引き入れて会社を興す一方、伴淳の別居中の妻−轟夕起子にも近づいて、色仕掛けで薬の権利を手に入れようとする。

 タンクについては、最初は犬猫で実験していたが、質および量に問題があり、次にタヌキで試すと上手くいきそうなところまで到達する。それでも矢張り、人間のタンクが必要だ、ということになる。夜、森繁が権利書を盗むために、伴淳の医院に押し入るシーンで、伴淳が森繁のことを、三國の手配したタンク提供者と間違う場面が一番可笑しかった。結局、伴淳が自分のタンクを一個取り、使う。執刀は流石に手が震えたので、助手の関千恵子に頼んだ、と云って片足を引きずって歩く。しかし、それでも薬は完成せず、最終的に関千恵子の婚約者、須賀不二男が、仲間(右翼の青年団)を集め、須賀を含む10人が睾丸を提供する。10人の青年が、箱を胸に抱えて、杖をつきながら、伴淳の医院に入って行く(皆、関千恵子に執刀されたのであろう)。もうこのあたりになると、苦笑というか、ブラックユーモアが過ぎると感じられてしまう。

 あと、ラスト近く、伴淳と轟が乗る車を追いかけた三國が、車の後部バンパーをつかんだまゝ、数メートル引きずられる、というカットがある。ロングショットなので、スタンドインかも知れないが、私には、三國が自身で演じているように見えた。

#備忘でその他配役等について記述します。

・伴淳と轟の娘が富士真奈美で、渡辺文雄と恋仲になる。渡辺の新聞社(支局)の上司に横山エンタツ

・八雲市の大きな病院の医師で医師会の幹部でもある石黒達也。関千恵子も同じ病院の医師だが、伴淳に恩義があり、彼を支援している。伴淳の親友の医師で千田是也

・タヌキのタンクから作った薬で人体実験されるのは浦辺粂子。水原の母親役。allcinemaなどでは飯田蝶子とあるが、飯田は出演していない。

(評価:★3)

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